なぜアメリカ人は寄付をするのか?現地で4年間生活した末に、家財をほとんど現地で「寄付」して日本に帰国するという、財布にとても痛い思いをした私の経験から書いてみます。


本日のウォール・ストリート・ジャーナルの記事でアメリカの寄付総額が過去最高になったというレポートがありました。日本語版は未公開なので、英語版のリンクを貼っておきます。

http://www.wsj.com/articles/charitable-giving-in-u-s-continues-to-rise-1434427261

要約:
2014年のアメリカ寄付総額はインフレ調整した後で前年比5.4%増加で過去最高。個人からの寄付総額のおよそ半分は、総人口4%の人々から集まっている。特に100ミリオン(120億円)以上の寄付をしている人たちの影響が強い。人々は、経済が再度ひどくなることが無いという考えに傾いているようだ。

ではなぜアメリカでは寄付が盛んなのでしょうか?その理由の一つに税金があります。

 

確定申告で税金を少なくできる

日本でサラリーマンをしていると、会社が配ってくれる年末調整の紙を記入して税金関係は終了となりますが、アメリカでは個人で税金をファイル(申告)する必要があります。もちろんサラリーマンもです。

日本の会社から駐在員として派遣されていた私も、近所の税理士に料金を払って、毎年3月ころに確定申告をしていました。最初は、日本だと税理士にお金を払う必要もないのに、余分な費用がかかるという気がしたものです。

事情が変わったのは、アメリカで家を買ってからです。

アパートに住むのが嫌で、かといって貸家に大枚を払うのも嫌。そのかわりリーマン・ショックで景気がどん底だったので、家は安い。さらにオバマ氏の政策で、家を買ったら税金の還付があるということで、渡米して半年ほどして現地に家を買いました。

住宅ローンを組んで家を買うと、年末に一年間で支払った金利総額の明細が届きます。その総額が人的控除より大きくなると、ファイルをするときに 「itemized deduction」 といって、一年間で支払った金利やその他「もろもろのコスト」を収入から全て控除し、残った金額に所得税が課されるのですが、「もろもろのコスト」の中に寄付控除を含めることができるのです。

そして、ここからがスゴイ。

中古の服でも靴でもテーブルでも椅子でも、スリフトストアと呼ばれる街の中古屋に持っていけばまとめて引き取ってくれて、そこで寄付の明細を出してくれるのです。

その明細に書く金額は自己申告です。もちろん「一般的な市場価格として適正なもの」という制限はあります。

そこで頭によぎるのは、市場価格で販売をする際の手間。

目の前の使い古した靴とTシャツとテーブルの写真を取って、オークションに出して、バイヤーとやりとりをして、お金を受け取った後に梱包・発送して・・・と考えると、もうムリ。

ヤードセールなどして販売したら、二束三文にしかならない。

だったら、まとめて寄付して税金の控除に使ってしまおうという気になる。

なので不要なものが出てきたら、スリフトストアに直行して明細を受け取ります。

そして年度末に、その明細をまとめて税理士のところに持って行って計上してもらえば、税金がセーブできる。

だから、寄付をする人は持ち家を持っている人が圧倒的に多いです。

もちろん税金の面だけではなくて、純粋に困っている人を助けたいという思いが強い国であるのも事実です。

私と幼稚園の娘と奥さんの3名でバスに乗れば、ほとんど毎回席を譲ってくれました。娘だけでなく私と奥さんにも。

恩返しのつもりで、日本の電車で年配の方に席を譲ったりしますが、座るときと降りるときに何度もお礼を言われ恐縮するほど。それだけ譲る人が少ないということかもしれません。

まとめると、アメリカで寄付額が大きくなるということは、やはり所得が上がっているから、税額を抑えるために寄付を使いたいというモチベーションが高まっているということ。あとは純粋に助けたいという気持ちが強いということでしょうか。

先日、日本のマングローブを植えるNGOに心ばかりの寄付をしました。立派な領収書とパンフレットが届きました。でも、やはり考えてしまうんですよね。

もし、手元の不要な服や家具などをドサッと寄付して控除を受けられる制度が日本にあったら。
もし、NGOのような団体でボランティアの活動をしたら、その時間に応じて時給の代わりに控除が受けられる制度があったら。
もし、寄付控除の制度がもっとシンプルで分かりやすくなったら。

最初はお金をセーブするために寄付を始め、でも気が付くと寄付をするのが楽しくなってくるんですよね。なぜかは分かりませんが、与えることで幸せを経験するようにできているからかもしれません。

追伸:

そんな寄付マニアだった私。日本へ帰国する直前に大量の家財道具を処分するためスリフトストアに寄付をして、税理士のところに意気揚々と明細を持って行ってバサッと渡したら、その年に限っては、普通の人的控除を使ったほうが良いと言われ、積み上げた寄付の明細は全く使い物になりませんでした。人生、思った通りにはならないものです。


TORU_COCOSTA
TORU_COCOSTA

40代からの自由な時間と収益を作るトレード教育を行っています。ビットコイン / ゴールド / 外国為替 の取引方法が学べる「ココスタ」運営(受講生4,800名)。現役トレーダー / 米CMT検定1級保有 / ビットコイン研究所ライター / 株式会社ファム代表取締役。受講に関するご質問など、気軽にお問い合わせください。

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