ビットコインは取引手数料が高騰するまま、「デジタルゴールド」の地位を維持できるのでしょうか?現物のゴールドと比較して、今の危うさを考えてみました。

 

上昇が止まらない取引コスト

今のビットコインは取引手数料が高騰を続けています。以下のチャートは直近2年の取引あたり手数料です。

Blockchain.infoより

この2年間、手数料が高くなり続けていることが分かります。

例えば$10を送金するのに$2取られるということも、別に珍しくなくなってきているわけです。

もともとは取引手数料がほとんど0であったことから利用者が増えたわけですが、今はその手数料が高騰をしています。

日本に住んで円を使う限り、銀行送金も月に数回は無料であったり、モバイルのサービスでも手数料0で送金できる手段には事欠きません。

この高騰するビットコインの取引コストを超えて優位性があるとしても、「国際送金よりは安い」くらいではないでしょうか。

つまり送金手数料の安さに優位性がなくなるなかで使われ始めた言葉が、価値の保存機能である「デジタルゴールド」という打ち出しのようにも思われます。

もちろん、取引所に預けたままなら送金手数料も無いし、価値が保存できれば良いよね?という考えもあって良いと思います。

ただ、ゴールドというからには、そうも問屋が降ろさない部分があるのです。

 

なぜゴールドはシルバーの75倍も価格がつくのか?

では価値の保存媒体として、地球上の最も多くの人が納得するであろうゴールドを例にして考えてみましょう。

このゴールドは、原稿を書いている11月17日の時点でシルバー(銀)の75倍の価格で取引をされています。つまり1:75ですね。

金と銀の価格比率

ところが産出をされる量の比率では、およそゴールド1に対してシルバー10前後となります。

つまり希少性だけでは説明できないプレミアムがあり、その一つが価値の保存機能かもしれません。

ではゴールドは、なぜ価値を保存したまま世界中のどこでも価値が認められるのでしょうか?

実は、この質問自体が答えになってます。つまり「世界中に持ち運べる」という点ですね。

仮に手元に1000万円という現金があって、それをゴールドの地金に変えれば、およそ2kg程度になります。

これならカバンに入れて持ち運びができますね。

ところがシルバーだとどうでしょうか?2kg☓75倍ですから、150kgを運ぶ必要が出てきます。

さすがに飛行機に乗るにも、150kgの金属を持ち運ぶとなると大変ですよね。

そこで銀の預かり証券などを発行して売買となりますが、それだと発行元を信用する必要が出てくるわけです。

日本なら制度が整っていても、そういうことができない国の方が世界中には多いわけです。つまり以下のような等式になります。

「簡単に持ち運びができない=信用で取引せざるを得ない=価値の保存に向かない」

これこそ、今のビットコインが目前に直面している問題ではないでしょうか?

 

結局は通貨と同じになってしまう

今のビットコインは手数料の高騰を止めるために、サイドチェーンを使うという考え方になっています。

イメージとしては株式取引を想像すれば近いかもしれません。

ブローカーに送金し、口座に残高が反映される。そこから取引を開始し、現金に戻すときには、またブローカーから送金をしてもらうという流れです。

口座に入ってしまえば、1秒間に1000回取引することも可能であり、入り口と出口だけビットコインに決済させるイメージですね。

翻って通貨が生まれた歴史を考えてみましょう。もともと通貨は、ゴールドの預かり証券から生まれたものです。

ゴールドのように重たくて分割に手間のかかるものは、普段の取引で使えない。ならばそれを預かってくれる業者に預り証を発行してもらい、それを使って価値の交換をしていたことが始まりです。

そこから金本位制が始まり、そしてニクソンショックで通貨とゴールドの連動は消えてなくなりました。

今の通貨は、ゴールドの裏付けは無く、国が価値を保証している銀行券でしかありません。

一方で歴史を振り返れば、日本が新円切り替えをして、従前の通貨を無価値にしたことも事実として残っています。

こうした中でゴールドは、発行体を信用せずに済む媒体として重用されるようになり、さらに安定性が高い組成と、そして記事で述べたように「持ち運べる」という特性で価値保存の立場を確立した経緯があるわけです。

さてビットコイン。仮にサイドチェーンで取引量を増やすアプローチが成功したとしましょう。

ところが、このサイドチェーンは相手を信用する必要のない「ブロックチェーン」とは別物です。

豊富な資金を持つグループ、例えばクレジットカード会社などが取引の場所を提供し、その中で高速な取引を何度でも行い、最後にブロックチェーンに記述して場所を出るというイメージです。

手数料が高く取引が遅いビットコインは動かさず、取引はサイドチェーンで行おうという考えです。

最近、マスターカードがブロックチェーンの決済システムに取り組むという記事も出ていましたね(こちら)。

もしそうなると、「場所を提供するサービサー」が取引できる相手を選ぶ権限を手にします。さらに取引手数料は提供者主導で決まることになります。

これって、今の通貨を軸とした決済と何が違うのでしょうか?

例えばCIAの盗聴などを表に出したWikiLeaksなどは、クレジットカードを含むすべての通貨ソースを遮断されても取引が可能なビットコインで活動の費用を賄ってきました(参考記事)。

相手を信用せずとも価値の移転ができる。それこそがビットコインに価値が付く理由なわけですが、取引が遅いからと信用が必要なシステムが入ってしまえば、それはビットコインでは無くなってしまうかもしれません。

「そのもの自体」を相手を信用せず手軽に動かせないなら、それはデジタルゴールドでは無いのです。

そんな危機感が徐々に醸成されガスが充満したときに、先日の2X延期が火花を飛ばしビットコイン・キャッシュを暴騰させることになったのではないでしょうか?

今のところ価格は上機嫌なビットコインですが、今一度、価値の源泉が何なのかを考えてみても良い時期に来ているのかもしれませんね。

ハッピー・ビットコイン!

 

※ お断り:著者はビットコイン&ビットコインキャッシュを少しだけ保有していますので、極めて偏った価値観を持っている可能性が大いにある点はご理解ください。


佐々木徹 (ささきとおる)
佐々木徹 (ささきとおる)

株式会社ファム代表取締役。愛媛県生まれ。英国ノッティンガム大学にて心理学を専攻、香川大学経済学部卒業。15年間の日米商社勤務を経て、2014年に独立・起業。同年には米国オンライン教育No.1のUdemyにて日本人初のトップ13講師入り。2,500名を超す受講生にトレードを指導する「ココスタ」運営責任者であり、トレーダー、起業家、マーケティング・ストラテジスト。講義一覧はこちら。