「富と情報には国境が無くなった」現実を理解し、いち早く対応を始めた人が次の主導権を握る。「日経CNBC Future of Money〜マネーの未来を探る」に参加するなかで、日本にいる私達もその攻防戦の最中にいることを再確認することとなりました。

この記事では自分が登壇したセッションの振り返りも含め、なぜそのような結論を持つに至ったのかをシェアしてみたいと思います。

※ 会場の様子などはツイッター上の #nikkeicnbc で確認できます。
https://twitter.com/hashtag/nikkeicnbc?src=hash

 

「投資家本音トーク:仮想通貨、正直どう考える?」

自分を含めた3名で行ったセッションです。株式投資のプロフェッショナルである坂本さん、NYのBlockTower Capital社のスティーブさん、自分の3名で行う中で、新しい発見も多くありました。

米国の機関投資家は暗号資産へ投資する現金を積んで待っている

これはスティーブ氏の話。

米国機関投資家の間では、今の暗号資産の下落に悲観的な印象は持っていない。

なぜなら、2017年の加熱を冷やす上で必要かつ健全な動きであるからだ。

今現在、もっとも完成が待ち望まれているのは「カストディ(資産預かり)サービス」。これがなければ、ファンド(機関投資家)は資金を振り向けることができない。

また今の市場構造では、取引所間のデータ交換を行うAPI仕様が統一されておらず、また市場の流動性も薄いために、少しでもまとまった注文が入るとシステムが止まったりする。

今の問題は、そのような体制やシステムの整備が完了していないことであり、逆に言えば解決すべき問題は明確である。

歴史を振り返っても、人間は乗り越えるべき課題が明確になった時には、それを解決してきている。暗号資産でも同じことが言えるだろう。

各ファンドから話を聞く機会も多いが、彼らは暗号通貨資産に投資するための現金を、現実にテーブルへ積み上げている状態にある。

あとはカストディのサービスが稼働をすれば、入れるだけ。この動きが始まれば状況は一変することになる。

事実、Yale大学の運営ファンドがクリプトへの投資を開始している。
https://www.cnbc.com/2018/10/05/yale-investment-chief-david-swensen-jumps-into-crypto-with-bets-on-two-silicon-valley-funds.html

Yale大学は先駆的な投資をする存在として市場に広く認知をされている。

1980年代にヘッジファンドが出現し始めたころ、だれもが「あやしい集団ではないか?」と見ていた。そんな世間の風潮を横目に投資を行い、多大な利益を上げてきた。

他よりも早く魅力的な投資対象を見つけ、長期保有をすることで利益を出し続けるYale大学。彼らが現実に暗号資産への投資を開始したことは、明らかに市場への強いメッセージとして受け止められている。

Yale大学が投資を始めたインパクトに関しては、坂本氏も国内株式の事例で「あのファンドが扱うなら、☓☓と△△が乗ってくるという流れは、よくある話ですよ」とのコメントでした。

法定通貨と異なり、ビットコインは国をまたいでも価値が変わることはありません。日本という国境を外し、今の市場で主導権を握っているプレイヤーに視点を移すことで、次の大きな波を見逃さずに済む好例かもしれません。

参考までに、このセッションで自分が使った暗号通貨の振り返りのスライドは以下に貼っておきますね。

 

国の主権を守るためにプライバシーを取り戻せ~数学者、e-cash考案者 デヴィット・ショーム

世界で初めてパソコン間で決済ができるe-cashを考案し、ビットコインの原型となったとも言われるモデルを開発した数学者。

今は情報プライバシーの保護を強くする技術や体制を作る時期に来ているという点を強調されていました。

以下は講演から一部を抜粋したメモです。

なぜ人々はプライバシーを大切にすべきか。

個人データは簡単に国境を越えて搾取される。ドイツでは当然のように誰もprivacyを最重要している。

考えてほしい。自分が「いつ、どこで、誰と、何をしているのか」という情報は、一体だれのものなのか?その情報を守るすべを持たなければ、情報で得られる利益を独占する会社が出てくる。

さらに情報は国境に縛られない。下手をすれば日本の情報という「お金」が根こそぎ、他の国の会社に抜かれてしまうことになりかねないのだ。

自分は日本をe-cashの時代から訪問してきており、とても素晴らしい国だと思っている。また人間関係が信頼の上に成り立っており、こんな安全で美しい国には個人的にも住みたいと思う。

ただ、デジタル情報に国境は無いのです。そこは力の世界であり、決して性善説だけでうまくいく場所ではない。

その場所で他国にプライバシーという資産を握られても良いのか?国の主権にも関わる問題だ。

デジタルの将来を考えるなら、プライバシーをいかに守るかを、今ここで誰もが考えるべきなのだ。

 

これを聞いて自分が出ていたセッションを思い出しました。

SNS上でインフルエンサーの推奨するコインが買われたりしていた2017年の状況について話をしていたとき、坂本氏はこんなことを言っていました。

「もともと日本はランキング好きなんですよ。東西横綱とか、昔からありますよね」

これ、おそらくデヴィット氏の言う信用と近いのかもしれません。

日本は、初見の人に対しては警戒をするけれど、一度信用をすると全部出してしまうという傾向が強いのではないでしょうか。

だから信頼できると思った人が出すものなら、ランキングや推奨コイン等も買われるわけです。

確かに日本ではそれが機能することも多いでしょう。ところが国を超えれば文化も「正しさ」も変わります。

日本では「信頼を破った方が悪い」という論に帰結をしがちですが、「騙される方が悪い」という国や地域が多いのも事実です。

日本のように安全で、恵まれたインフラも整った国であれば、「信頼は守られるべき」という考え方も成り立つでしょう。

ただ、その環境が普通でない国のほうが、地球上には遥かに多いのです。

 

ビットコインの本源的な価値は「実物がなく国境に縛られないこと」

今回のイベントを通して多く耳にした議論は、ビットコインに本源的な価値はあるのか?という話だったように感じます。

もちろん、ゴールドや土地のように「実物」が存在するもの以外は価値を維持できないという考えも間違っていないと思います。

ただ、もし自分が一つ付け足すとするなら、それは「ビットコインでしか財産を守る方法がない人が多数いる」ことかもしれません。

”Bitcoin”を検索する回数が多い国を見るとよく分かります。

上からの常連は、南アフリカ・ナイジェリア・ガーナ・スロベニア(一時期)等です。

ビットコインの検索回数が多い上位国
ビットコインの検索回数が多い上位国

国のトップの座にある人物が私腹を肥やすことを目的としていたり、テロの百貨店と呼ばれる危険地域であったり、シリア難民がドイツへ抜けるための通り道にあった国(スロベニア)などが並んでいます。

人間は、生命の安全が脅かされれば、決められたルールを破ってでも自らの安全を確保しようとするものです。

自分の生命に保障がない国、生きるために国境を超え逃れる必要がある環境。そこでは、実物の裏付けがあるもの(ゴールド)などは、すぐに略奪の対象になります。

日本という枠を外して考えてみると、「実物がなく国境に縛られないこと」が本源的な価値の一つになりうるのかもしれませんね。


佐々木徹 (ささきとおる)
佐々木徹 (ささきとおる)

佐々木徹(ささきとおる)・・・トレード教育者。暗号通貨・コモディティ・為替まで取引方法が学べる「ココスタ」の運営責任者であり、トレーダー、起業家、マーケティング戦略家。4,000名超の受講生をもち、「時間と収益を自分で作り出す人を増やす」をライフワークとする。「ビットコイン・ブロックチェーンスクール」では投資部門担当。英語圏向けYouTubeチャンネル「BitcoinGeekend」では購読者が2,800名を超える。株式会社ファム代表取締役。