アウトドアのブランドであり、北米で圧倒的な人気を誇っているパタゴニア。同社が気候の変動と戦うために全株を譲渡し、剰余利益を環境危機とたたかうために使うと声明を出しました。その中に、なぜ今の株式会社では環境危機に対処できないのか、理由を見つけましたのでシェアしてみます。

パタゴニアの公式サイトより

創業者のイヴォン氏が書いた手紙の一部から抜粋をしてみます。

選択肢の一つはパタゴニアを売却してその売却益をすべて寄付すること。しかし、私たちの価値観や世界中で雇用されている人材を維持してくれる新たなオーナー(所有者)を見つけられるという確信はありませんでした

もう一つの選択肢は、会社の株式を公開することでした。とんでもない失敗になったでしょう。どんなに素晴らしい志のある公開会社でも、短期的な利益を得るために長期的な活力や責任を犠牲にしなければならないという過剰なプレッシャーに晒されます。

本当のところ、優れた選択肢はなかったのです。だから自分たちで作りました。

パタゴニア公式サイトより
https://www.patagonia.jp/ownership/

今の資本主義では、会社が公開する決算情報で株価が決まってしまいます。利益を上げ、コストを削り、在庫を圧縮し、人件費を抑え、配当率を上げていく。

株価は今の会社を評価する物差しであり、今からどこに向かうかを評価は(さほど)してくれないのです。

考えてみれば、株式会社の制度は1602年の東インド会社にまでさかのぼります。

成功率が2割ほどしかない一発勝負の航海を実行するため、返済リスクのない資金を投資家から集めたことが起源でした。

目の前にある儲けと危機にしか人間は反応できない

東インド会社の資金ニーズは明快でした。

  • 成功すれば稼ぎが明確な航海チャンスがある
  • 10回に8回くらいは失敗する
  • 9回目に成功しても利益は十分に出る
  • 実行者の資金量では成功までに枯渇する
  • 資金を調達すれば成功到達の可能性が上がる
  • リスクの引き受け手を探して資金を調達する
  • 仮に1回目で成功すれば配当で投資家は大儲け
  • 投資家は儲けの可能性を得るためリスクを引き受ける

わかり易いですね。リスク・リターン・確率が計算できるから、投資効率も把握できる。だから資金が集まる。

株式会社は、この流れにハマったシステムだったわけです。

ただし気候変動問題に対しては、微妙です。

私たちは、目の前にある脅威や利益に対しては行動を起こすことができます。だからこそ投資家は東インド会社に資金を投じることができました。

では東インド会社が投資家に対して、こんな説明をしていたらどうだったでしょう?

明日からの航海は失敗するかもしれない。だけど私たちは100年かけて成功させられるし、そのとき資金は50倍になって戻ってきます。だからお金出してね。

架空版の東インド会社パンフレットより

いや、だれも投資しないでしょ?だって100年後なんて、もうこの世にいませんもの。

そう、私たちは(私も含めて)目の前にある儲けとリスクに対してのみ、体が反応するように出来ているんです。生存本能のなせる技ですね。人類すごい。

では環境危機はどうでしょう?いま明白に進んでいる気候変動は、たしかに筆者のいるさいたま市の夏を異常に熱くしています。

海に沈みかけている島国もあれば、かろうじて水面に出ている陸地が消えて領海を減らす危機に面している国もあります(日本)。

だけど、どこかで眼の前の危機とは捉えづらい。

さらに、今の株式会社という制度では、環境危機への対処というリターンが数値化できず、結果的に資金を集めることができないんですよね。ついでに、ESGはハリボテだし。

そのようなことを考えていた時、パタゴニアの声明を目にして「なるほど」と思ったわけです。

作った会社をサステナブルに維持しつつ、得られた資金を環境改善に回していく。こうすれば息の長い活動もできるし、自社のブランドにもプラスとなる。

唯一損するのは、株式を通じて資金を投入できない投資家の「機会」だけ。悪くはない試みですね。頑張ってもらいたいです。

それでは今日はこの辺で!


佐々木徹 (ささきとおる)
佐々木徹 (ささきとおる)

40代からの自由な時間と収益を作るトレード教育を行っています。ビットコイン / ゴールド / 外国為替 の取引方法が学べる「ココスタ」運営(受講生4,800名)。現役トレーダー / 米CMT検定1級保有 / ビットコイン研究所ライター / 株式会社ファム代表取締役。受講に関するご質問など、気軽にお問い合わせください。

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